二宮金次郎(尊徳)などと書くと、唐突で、時代錯誤だ・・・と思われるかもしれませんが、すこしおつきあい下さい。実は、台本づくりの参考になろうかと、ジョージ秋山さんの、金次郎をモデルにした漫画を読んでいましたら、以下の言葉にであいました。そっくり引用させて貰います。
「たとえば役人がよいといっても、全国民がみな役人となったらどうだろう。必ず国は滅亡する。しかし全国民がみな農民となっても国は滅亡しない。 兵士は貴重であるといっても、全国民がことごとく兵士になれば同様に国は立ち行かない。商となるも、また同じことだ。 しかるに農は大本であるから、全国民がみな農となってもさしつかえなく、立ち行くことができる。 農は大本であり厚くしなければならず、養わなければならない。その大本を厚くし養えば、その末はおのずから繁栄することは疑いない」
これは農業を中心に国家を動かそう・・・という農本主義の思想です。食料の自給率が
39パーセントという、今の、日本の状態を考えるとかなしくなります。ひょっとして、
日本はなくなってしまうのでは、という危惧もおこります。おさびしいかぎりです。てな
印象を抱いてたところに、たまたま、「国家の品格」を著わされた藤原正彦さんの、美しき里山が国家の品格をつくる、というエッセイを読ませて貰い、粗末に荒廃した土地をみんなで、がんばって元の自然には戻らなくても、美しい里山づくりをめざすことによって
人にとって一番大切な、繊細な、美しいことへの感受性が育まれる・・・という発想に触れることが出来ました。藤原さんは数学者ですが、「わたしには、信州で土にへばりついて生きてきた百姓の血が流れています。それが、わたしの誇りです。」とも書かれています。自然と向き合い、ある時は厳しく、ある時は繊細に、また、ある時は美しい風景への憧憬を根っこに生きてきた人たちへの誇りを取り戻す。これは見事な品格だと、思います。 私は今、鼠小僧と闘っていますが、義族たちが、どういう、新鮮なことに気付いてくれるのか、作品づくりの共闘者、岡さん共々、今、懸命に頭の隅々を洗って、ひとつの品格づくりをめざしています。
農本主義の先に鼠たちが辿りつけるところもありそうだ・・・とも思いつつ。
佐 野 曉